流星ワゴン [図書館]
物語の設定は非現実的だけど、背景は結構リアルで、今の同世代男性は身につまされる人が多いと思う。気づかぬうちに壊れていた家庭。そこからの立ち直り。どこでどう間違ったのか解らない。自分は一所懸命やってきたつもりだけど、何も解っていなかったんだなあと後悔と反省。家族と少しづつ気持ちを通わせるしかないよなあと、ゆっくり前に歩き始める。とても現代的。
この作品が、その年の「本の雑誌」年間ベスト1になったのだから、いかに極身近な問題で悩んだり不安を持っている人が多いか、小説に異次元を求めるのではなく、身近な事に対する示唆や安らぎ、少しの勇気を求めているかが伺える。そういう意味では、確かにいい作品だと思う。
でも、女性は描けていない。
というか、解らないから描けない、描くことを放棄している。妻がとった行動の訳が説明されていない。つまり、夫にとってショックな出来事であれば何でも良かったし、その理由もなくてもいいのである。
最後に主人公が歩むのは、傷ついた自分の再生への道である。つまりこれが、家庭が壊れた理由の一つではなかろうか。たぶん、家庭は再生できないだろう。
by かっぱ (2006-08-09 09:18)